「砂の女」は人間存在の意味を問う大傑作。

再読したんだけどね、安部公房「砂の女」だ。
この本を読んだのは、中学生の時だ。それ以来の再読。
今でこそ、毎年のように言われてるけど、
村上春樹ノーベル賞を獲るんじゃないか!?
って・・・。
これね、オレが中学生の頃は違ってて、
次にノーベル文学賞を獲るなら、安部公房大江健三郎だろう
って言われてた時代があったのだ。実際に大江健三郎は受賞したんだけど、ノーベル賞は「生存してる人」に授与される賞だからな(たまに例外もあるかもしれないけど)、安部公房が生きてたら受賞してたんじゃないか?と思うのだ。てか、受賞しててほしい・・・。
まぁ、毎年、一部のマスコミで騒いでたわけだ。
今年こそは、安部公房大江健三郎、どちらかが獲るんじゃないか?
って。
そういう時代の空気に後押しされて読んだのが、安部公房の代表作「砂の女」だ。
その時の感想なんだけど・・・
チンプンカンプン!ww
これ、何が言いたいんだ?
って感想しかなかったな。
中学生には難しかった(涙)

 

で、人生の折り返し点を超えた今、再読してみた。ブラリと入った本屋でたまたま見つけたんだけど、ちょうど時間もあったからな。

読み始めて一気に読了。
大傑作だ!
20世紀、日本文学の最高峰!
少なくとも、オレが読んできた本の中では、間違いなく最高の到達点。これ、芸術と言っても良い。
とりあえず、いつものように、文庫本の背表紙から引用してみようか。
砂の女 (新潮文庫)
安部 公房
新潮社
2003-03

 

 

~背表紙~

砂丘へ昆虫採集へ出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開の中に人間存在の象徴的姿を追求した書下ろし長編。20数カ国語に翻訳された名作。
不条理な文学とでも言えるかもしれない作品だ。
え~と、不条理文学の有名どころだと、カフカ「変身」って小説がある。
ある朝、目覚めると、巨大な芋虫になってた男の物語。これに通じるところのある小説だ。自分の力ではどうにもできない状況、そこに置かれた時の人間を描いてるってことでは、「変身」「砂の女」は共通のモチーフを持ってると言えるかもしれないな。
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この小説、登場人物は極端に少ない。
男、女、部落の人が数名。それでいて、この濃密さ・・・。
30歳過ぎの男が昆虫採集のために、海岸沿いの部落にやってくる。夜、一人の老人の世話で、砂穴の底に立つ一軒の家へ。男にとっては、一晩だけの宿の代わりだ。その家では、毎夜、スコップで砂を掻き出さないと砂に埋もれてしまう。作業を始める女に男が言う。「じゃぁ、一つ、ぼくも手伝うとするか。」
これに対する女の答えがゾクッとさせられる。
「いいんですよ・・・いくらなんでも。最初の日からじゃ、わるいから・・・」
これ、かなり怖いセリフだ。
部落の人に縄梯子も取り上げられて、砂の底の家から脱出する手段を亡くした男。
砂に埋もれてしまわないように、毎夜の砂掻きは行うけど、心の中では脱出の手段を考えている。この辺りの心理、サスペンス風な描写でジリジリするような緊迫感だ。
女の住む家は、実にみすぼらしく、毎夜の砂掻きなど生活もすこぶる辛いものだ。それなのに、女には他所に行く希望が全くない。男は彼女が今の生活に満足していることを不思議に思うけど、女は「表に行ってみたって、べつにすることもないし・・・」なんて答える。「用もない」のに出歩くことに少しの憧れもない。
女にとっては、家を守ることが生きがいであり幸せなのだ。
ここは深いな。
いろいろ脱出の策を練るけど、そのつど失敗に終わる男。
はじめのうち、あれほど熱望していた自由外の生活、今はそれさえも「灰色」に染まって見えてしまうようになる。外の世界での自由と、砂穴の底での生活・・・どちらが男にとって幸せなのか?
ラスト、ついに逃走するチャンスが訪れるんだけどね、逃走しないのだ!
砂穴の中で自分が作った、ささやかな装置を部落の人に話したいという欲望。
考えてみれば、彼の心は、溜水装置のことを誰かに話したいという欲望で、はちきれそうになっていた。話すとなれば、ここの部落のもの以上の聞き手は、まずありえまい。今日でなければ、たぶん明日、男は誰かに打ち明けてしまっていることだろう。
逃げる手だては、またその翌日にでも考えればいいことである。
あれだけ恨み、憎んでいた部落の人に対する前半とラストの心境のコントラスト
最後は、裁判所からの失踪宣告(7年)の文章で終わるんだけど、この小説は、恐怖小説でもあるな。
ギリシア悲劇みたいな奥行きだ。
歳をとると見えてくるものが有るって言うけど、たしかにこの歳で解ってきたような気もするものも多い。

この小説、いろいろな感情を掻き立てるし、様々な問いを投げかけてるけど、その中の一つが、
人間にとって幸せとは何か?だと思う。
仕事で成功する、金を儲ける、健康でいること、夫婦円満・・・人によって幸せの定義は違うだろうけど、この小説が問うのは、
もっと根源的な幸福!
だと思うのだ。
オレがいつも言ってるような、ねんどろいどを揃えたい!聖地巡礼に行く!なんてのも幸せな一面だけど・・・
もっと根っこの部分の幸せを問うてるんだよな。
とは言っても、オレの頭で答えが出せるわけもなく、悶々としてるけどな(涙)

で、村上春樹だけど、安部公房と比べると、なかなか面白い。
両者ともノーベル賞の有力候補と言われてるけど(安部公房は亡くなったから、可能性は消えた)、文体がまるで違うように思うぞ。
安部公房の小説は実験的。ある意味、前衛!
村上さんは、妙にキザ!ww 翻訳の文章を読んでいるような文体・・・。
どちらが好みかは、人それぞれ!

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次回の予定~
ねんどろいど撮影の話。
今回は御殿場海岸と結城神社だ。
いやぁ、疲れたけど満足した。

 

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