小説「蛍川」は日本語の美しさを体現する!

今回は宮本 輝「蛍川」の話。
先日、川三部作の一つ「泥の河」を読んだんだけど、あれは凄い小説だった。読後はあまりの迫力に、しばらく読書する意欲も吸い取られてしまった。で、ようやく読書欲が湧いて来たので、今回は、同じ一冊に収録されているもう一つの小説「蛍川」を読んだ。

この記事を書く前に、2回ほど読んだんだけど、この小説は・・・
日本語が美しい!

「泥の河」では大阪を舞台にした蒸し暑い情景だったのが、こちらの「蛍川」では裏日本の厳しい冬と春を舞台に、「友情」、「恋心」、「嫉妬」、「生と死」を描いている。
思春期の少年とその母を軸に、人間が生活していく事の「美しさ」を描いてるような気がする。1978年、第78回芥川賞の受賞作だ。
時代は昭和37年、昔は事業で名を成した父も今は借金しか残ってない。その父の元に後妻として入った妻の千代、二人の間に出来た子(竜夫)。脳溢血で倒れた父、金策のために父の旧友を訪ねる竜夫、父の死、幼馴染の英子への恋心、性の芽生え、友人への嫉妬と友人の死・・・。
短い小説の中に、これでもか!っていうぐらい詰め込まれてる。
少年の視線での描写と対を成すように描かれてるのが、母(千代)の話だ。
夫と出会う前の話(実は二度目の結婚であり、もう成人してる子が居る)、今の夫との出会い・・・。
少年の話と母の話が交互に語られる事で、深みが増すんだよなぁ。
しかも、文章が上手い!
これだけ、詰め込んでるのに文庫本でわずか94頁にまとめてるのだ。ただ、まとめてるだけじゃない。とても美しい日本語で描き切ってるんだよね。
たとえば、ラストの一文。この場面は最初から通して読んでくると、最高に美しい描写だ。

千代はふらふらと立ちあがり、草叢を歩いていった。もう帰路につかなければならない時間をとうに過ぎていた。木の枝につかまり、身を乗り出して川べりを覗き込んだ千代の喉元からかすかな悲鳴がこぼれ出た。風がやみ、再び静寂の戻った窪地の底に、蛍の綾なす妖光が人間の形で立っていた。

 

初めて宮本 輝を読んだのは青春小説の「青が散る」だったけど、その時は、こんなに凄い日本語を書く人とは思わなかった。正直なところ、な~んか古臭い文章だな、ってのが実感だったけど、この「蛍川」は間違いなく美しい文章だ。
運命に抗いながらも運命に翻弄されていく人間の姿を、美しい日本語で描いた小説。
昭和37年の舞台設定だけど、本質のテーマは現代社会でも通用する内容だ。
ラノベも良いけど、こういう日本語で書かれた小説を読むのも楽しい!
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そうそう、こちらも1987年映画化されているそうだ(知らなかった)。
映画「蛍川」
父親に三国連太郎、千代に十朱幸代、他に大滝秀治、川谷拓三など、なかなかの役者陣が出演してるらしい。原作のラスト、蛍の大群のシーンなんかは、どうやって映像にしてるのか気になる。
機会があれば観てみたい。

 

次回の予定~
勉強と手品は似てる!
マジック動画「ワイルド・ワイフ」をやってみた!

 

 

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